私的名盤⑧
SEX MACHINEGUNS / SEX MACHINEGUN(1998)
日本のヘヴィメタル・バンドの1stアルバム。未だに色モノ扱いされるバンドですが、音楽性はガチのヘヴィメタル。魂まるごとヘヴィメタルです。
スラッシュメタルから北欧メロパワ、メロスピ等の多くのエッセンスとオマージュを含んだ本格派のサウンドに、ANCHANGの突き抜けハイトーンがバーニングファイヤー。
その上でヘヴィメタルという鋼鉄の牙城をコミカルな歌詞で簡単にアクセスできるようにした功績は大きい。代表曲#5「桜島」と#7「ファミレスボンバー」収録。
また日本のヘヴィメタル音楽誌”BURRN!”にて”歌詞がフザけ過ぎているため「?(評価不能)」”とされたことで知られる作品でもある。
オススメ曲:#7「ファミレスボンバー」
SIAM SHADE / SIAM SHADE Ⅵ (2000)
日本のロックバンドの6thアルバム。「1/3の純情な感情」のヒットで知られる存在だが、オリジナルアルバムを聴くと彼等の技量とセンスに驚かされる人は多いはず。
本作は2枚組でハードなDISC1とポップなDISC2に分けられる。HR/HMからニューメタルやミクスチャーまでもを取り入れたDISC1は、冒頭を飾る「GET A LIFE」を始めとして彼等の特権であるテクニックと熱さを約束。
ポップ・サイドとはいえ彼等なりのロックの醍醐味が詰まったDISC2。こちらも熱くエモーショナルで「Fine Weather Day」や「せつなさよりも遠くへ」、「曇りのち晴れ」といった曲が特に光る。
オススメ曲:#11「せつなさよりも遠くへ」
SlipKnoT / SlipKnoT (1999)
アメリカの猟奇趣味的激烈音楽集団の1stアルバム。高3に進級する前の春休み、初めて自分から聴きにいってレンタルした洋楽はスリップノット。作品は『IOWA』だった。
ヴォーカルにツインギター、ベース、ドラムという編成にとどまらず、2人のパーカッションにDJ、さらにはサンプラーを擁する9人もの大所帯。そこから放たれる猛烈なサウンドは、あまりにも衝撃的だった。
この1stも激しいことに変わりないが、不思議とキャッチーさがあってノリが良い。2ndほど人間はクソって感じではないし、空耳曲だってある。
平均して3分台というコンパクトな楽曲設計もまた、アルバム全体のスムーズさに繋がっている。1stと2ndは金字塔。
オススメ曲:#2「(sic)」
Sonata Arctica / Ecliptica (1999)
フィンランドのメロディック・スピードメタル・バンドの1stアルバム。わたしにとってメロスピといえばソナタ。そして、ソナタ・アークティカは冬のイメージ。
2003年、高校3年生の時に数少ない友人が熱心に推してきて聴くようになった。当時はメロスピなんてまるで知らなかったけど、ネオクラシカル風の美旋律と圧倒的なスピード感が伴う作品を前にしてひれ伏した。美がいきりまくっている。
#6「FullMoon」はいつ聴いても名曲だし、その友人がよくカラオケで歌う(笑)。ちなみにライヴは2005年と2007年の2回見ている、前述の友人と共に。
オススメ曲:#6「FullMoon」
sukekiyo / INFINITUM (2019)
DIR EN GREYのフロントマンである京さんを母体とした5人組バンドの3rdアルバム。タイトルは、ラテン語で“無限”を意味。
相変わらず多種多彩な表現でもって構成されているが、少し疎遠になっていた1stと1stミニアルバム辺りのメロディ/耽美性に回帰しつつ前進。今回はわかりやすくヘヴィとメロディアスな曲がくっきりと分かれている。
呪術的な雰囲気づくりや重さを伴った曲、昭和末期~平成初期を思わせるJ-POP歌謡、深い愛着と欲望に憑りつかれた恋煩いの果てのバラードまで。
その変幻自在さの中で心をわしづかみにするメロディがある。#12「憂染」はわたしの2019年ベスト曲第1位。
オススメ曲:#12「憂染」
Svalbard / When I Die Will I Get Better (2020)
UKブリストルの4人組ポストハードコア・バンドの3rdアルバム。上記したOathbreakerと共に歩んでいくようなクラスト経由のポストハードコアという印象が、本作においてはポストロック/シューゲイズ要素の強化を突破口にして、さらに進化。
幻惑のレイヤーとクリーンなコーラスが彩ったかと思うと、持ち味の馬力と瞬発力を思う存分に活かして突っ走り、また減速しては甘く魅惑する。過剰なドラマティシズムは全曲に渡ってフル稼働している。
「When I Die, Will I Get Better? = 死んだら、私は楽になりますか?」と自身と社会に問いかけながら、世と刺し違える覚悟を持って彼女たちは叫ぶ。After Hours 19におけるパフォーマンスは、ひたすらに熱かった。
オススメ曲:#5「Silent Restraint」
Taken / Between Two Unseens(2004)
97年に結成されたアメリカ・カリフォルニア出身のメロディック・ハードコア5人組。日本では叙情派ハードコアの雄として知られる。04年に解散するも2015年に復活し、現役で活動中。
本作は解散前のラスト作にして、Taken節を確立した最高傑作。持ち味といえるハードコアの暴力性や突進力は受け継がれるものの、本作の特徴はメロディの完全開花。
Explosions In The Sky辺りを彷彿とさせるインスト・ポストロックが盛り込まれ、予想だにしない美麗サウンドの応酬に面喰らう。それが感情むき出しの叫びや硬質なサウンドとマッチ。
加減速自在の展開も手伝って、独特の破壊力と透明感のある叙情性を有している。静と動のなめらかな流動も特筆すべき点で、激しさと麗しさのコントラストが抜群。
オススメ曲:#1「Arrested Impulse」
This Will Destroy You / Another Language (2014)
アメリカ・テキサス州のインスト4人組。1st~2ndは先輩のEITSに感化された静から動への移行をメインにした音像だったが、前3rdアルバムでは”ドゥームゲイズ”と自称した音響アプローチを取るようになる。
この4thではドゥームゲイズは薄めつつ、初期の作風が重なり合う。そして電子音の増量。特徴的なのはゆるやかな遷移とまどろむようなレイヤーで、気づけば意識が侵食されている。
幅広いレンジで骨抜きにする#1「New Topia」を皮切りに、#2「Dustism」でTWDYのモテ要素をフル活用したメランコリックなインストを展開。回帰と地続きの表現でエレガントなトーンとダイナミクスが連帯した佳作。
オススメ曲:#2「Dustism」
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toe / the book about my idle plot on a vague anxiety (2005)
日本の人気インスト・バンドが残した金字塔ともいえる1stアルバム。エモーショナルでいてダイナミックなインストの決定盤。
雄大な世界観を感じさせる彼等のサウンドは、ストイックな4人のアンサンブルが主体。だが、それでも自然という壮大なバックオーケストラと共に奏でる音のようにも感じさせる。
辺見庸氏の著作タイトルを拝借した#1「反逆する風景」から始まって、#11「everything means nothing」まで一冊の本のような深みが本作にはあるし、2020年代に入っても全く色褪せない輝きを放っている。
オススメ曲:#2「孤独の発明」
world’s end girlfriend / LAST WALTZ (2016)
6thフルアルバム。テーマは自身の名でもある「world’s end girlfriend」で、これまでで最もパーソナルな哲学と領域に深く踏み込んだ作品。
全10曲約70分の本作からは、甘いファンタジーよりも重いリアルを描いた印象が強い。人間の悲喜こもごもよりも、ロマンチックな希望よりも、現実にある生と死が身近に感じられる。
自身でwegの音楽には特定のメッセージはないと言うが、万物の美しさや生命力を容赦のない表現で持って肯定する。そんな大河のように雄大な音の芸術。彼のカタログの中で最も精神的に響く作品。
オススメ曲:#4「Flowers of Romance」
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