ポストメタル・ディスクガイド 105作品

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ポストメタル・ディスクガイド②

Boris / Flood (2000)

 英国のFACT MAGAZINEが2015年に発表した”ポスト・メタル・レコード TOP40″の第9位にランクインした作品。Borisといえばドローンメタルを主体に、ポップにもヘヴィにも振り切れる幅広さがある。

 本作は2枚目のフルレングスで、4つのセクションから成り立つものの1曲70分という超大作。すでに96年の初作『Absolutego』で1曲60分のドローン地獄を味合わせているが、こちらはミニマル~ノイズ~プログレ~ドローンと行き交うもの。

 もっとオーガニックな質感があり、海と空を思わせる雄大さがある。ポストメタル感は薄いと言えば薄いが、静と動のダイナミクスの真髄を堪能できるはずだ。

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Bossk / Audio Noir (2016)

 1stフルアルバム。2005年にUKケント州アシュフォードで結成されてますが、2008年に活動の過酷さから燃え尽きるように一度、解散。2012年に復活を遂げて満を持しての作品。

 ポストロック~ポストメタルを主領域にした楽曲の組み立てを施した上で、曲間はシームレスに繋がっている。ひとつの物語を7つに細切れにしたという感覚があり、1曲の中でも明確な起伏に富む。

 #4「Kobe」はBosskを代表する曲として君臨し、水晶のように揺らめき煌めくギターのリフレインを中心に、ポストメタル系の大爆発へとスイッチ。その雄大なコントラストは決して他バンドに引けを取らない。

 本作はRoadburn Festival 2019で完全再現されており、同フェスは”時に催眠的で美しく、時に粉砕的な『Audio Noir』は、まさに旅のような作品だ”と評している。

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Bossk / Migration (2021)

 2ndフルアルバム。#2にてCult Of Lunaのヴォーカルがゲスト参加しているが、CoLを想起する巨大なリフの殴打、クリーントーンを中心とした叙情のパッケージング。

 そこに日本のエクストリーム・ノイズ集団のENDONから3人が全編にわたって音像を書き加える。ヴォーカリストをゲスト外注した2曲以外は、サンプリングボイスを使うことあれど基本はインストで構成。

 アンビエントとノイズの間を揺れ動くも劇的なクライマックスを迎える終曲#7「Unberth」は、このバンドにしか出せない荒涼とした雰囲気がある。加えて、全7曲で約42分とこの手のバンドにしては比較的短い尺なので聴きやすい。

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Burst / Lazarus Bird(2008)

 1993~2009年まで活動したスウェーデンのプログレッシヴ・メタル5人組の最終作5th。テクニカルメタル、デスメタル、プログレ要素の強い音楽性である。そこに効果的にスラッジメタル~ポストロックの要素が交錯。

 だからかポストメタルというジャンルで言及されることもそこそこ。たおやかな叙情性は組み込まれるものの、MastodonとNeurosisとThe Dillinger Escape Planが交わったような長尺曲(平均7.5分)がアルバム全体を占める。

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Callisto / Noir (2006)

 フィンランドの8人組?ポストメタル集団の2ndアルバム。モダンなスラッジメタルを基調としながらも、ジャズやプログレへの軽妙なアプローチがみられる。

 フルート、サックス、メロトロンといった楽器で華やぎをもたせながらも鼓膜を押し潰すような重量感を同時に持ち合わせる。静と動の揺らぎあるシネマティックなサウンドは、美しく気品さえ感じさせるものだ。

 ただ、ヴォーカルはかなりデスメタル寄りのドス効きすぎ声質なので、好みが分かれそう。実験的と評されることもあるが、長年の活動を通じてポストメタルの新境地を開拓し続けている。

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Callisto / Providence (2009)

 3rdアルバム。全10曲約68分収録で、曲は6~7分台というほぼ固定尺で構成。また、新メンバーとしてヴォーカリスト・Jani Ala-Hukkalaが加入。

 作品ごとに積極的に変化しているバンドだが、本作はずばりマイルド&美麗化。クリーンヴォイスの割合が90%以上を占め、それを活かすようにメロウなギターサウンドが主体となる。

 端的には、歌ものポストロック/オルタナロック化といえるかもしれない。

 バンド主導で変化を選び取っていく、実験精神のもとで常に制作を行っているのがCallistoの最大の特徴。本作は、空間への拡がりと繊細な叙情性に引っ張られながらも、重いとこは重くを貫かれている。

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Converge & Chelsea Wolfe / Bloodmoon: I (2021)

 ハードコアをアートの領域まで昇華したConverge、闇夜の歌を唱え続ける女性シンガーソングライター・Chelsea Wolfeによるコラボ作。

 100m走の如く駆け抜けるパートも存在するとはいえ、速度を犠牲にした鈍いスラッジメタルが基本。そこにダークかつ妖しさを加えたサウンドを用意することでConvergeは、Chelsea Wolfeを迎え入れている。

 彼女も応えるように肉体と精神に来る重い打撃のような歌を響かせている。必然のコラボレーションは、ヘヴィロックの可能性を大いに開拓するものだ。

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Cult of Luna / Salvation (2004)

 ポストメタル黎明期といっていい1998年から活動をスタートし、歴23年を超えるスウェーデンの巨星。本作は3rdアルバムで、専任のキーボーディストが加入して7人編成でつくられた。

 ”Slavation = 救い”と題された中にCoLの進化を見るもので、現在に通ずる音楽性/作風を本作にて確立。曲は耐性のいる長尺な構成がほとんど。

 だが、肉体的にも精神的にも重い衝撃を有しており、轟音と静寂のダイナミクスの付け方が、理想的なレベルへと引き上げられた。初めてMVが制作された名曲#3「Leave Me Here」収録。

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Cult of Luna / Somewhere Along The Highway (2006)

 この4thアルバムは最高傑作と評されることが多く、ポストメタル史においても最重要な作品のひとつ。

 北欧のノーベル文学賞受賞者である小説家ジョン・マックスウェル・クッツェー『マイケル・K(原題:Life and Times of Michael K)』に触発され、”男性の孤独”をテーマに製作。スラッジメタルとポストロック、プログレッシヴロックの衝突による明確な産物としての巨大なサウンドとスケールに圧倒される。

 16分近いラストトラック#7「Dark City Dead Man」を聴き終えれば、あなたはCoLを信仰せざるをえない。ポストメタルの大海に身を投げる、そんな時に本作は最適解のひとつ。海外メタル誌・Decibel Magazineは”2006年のベストアルバム第5位”に選出している。

Cult of Luna / Vertikal (2013)

 6thアルバム。SF映画黎明期の傑作とも評されているフリッツ・ラング監督による1927年公開の映画『メトロポリス』を題材に制作。

これまでの作風からトリップホップ~ダーク・アンビエントの要素を上手く取り入れ、宇宙を思わせるスペーシーな感覚や幽玄な雰囲気が作品に漂う。それらが重さとダークなトーンを支配的にはせず、重厚な轟きの裏で絶妙な塩梅として機能している。

 その上でCoLの代表曲である2「I: The Weapon」、#8「In Awe Of」を収録。綿密に構成された全10曲約66分を堪能できる。

Cult of Luna & Julie Christmas / Mariner (2016)

 上記したBattle of MiceのJulie Christmasとのコラボレーション作品。コンセプトに「Space Exploration = 宇宙探査」を据える。

 コラボだと相手に合わせるということを少なからず意識する点。だが、本作は鬼気迫る両者の本気のぶつかり合いによるダイナミズム/ドラマティシズムが生み出される。

 静・動行き来型の平均10分の曲尺、暴力性をはらむ重低音、退廃的なメロディ、SF感が漂うシンセの装飾、空気を切り裂く咆哮。そこに加わるJulie Christmasの変幻自在の歌声。十二分に納得のいくコラボ作。

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