ポストメタル・ディスクガイド 120作品

 弊ブログには個人的ポストメタル探求という記事がありました(※)。07年から興味を持って追いかけていたポストメタルというジャンルについて大々的に書いてみたものですが、2013年の初出から既に10数年が経過。

 定期的に書き直し/書き足しをしているものの、当然ながらこれはこれで完結しています。ですから、20年代に入ってるわけだし新しいものをつくろうという試み。それが本記事です。

 今回はポストメタルの手引きとして活用できるような“ディスク・ガイド”を制作してみました。わたくしが作品紹介している中から選りすぐった120作品を掲載。長いですが、最後までお付き合いいただければ幸いです。

※ 2024/4/30に前述コラムを【私的ポストメタル探求 ~2024年再構築Version~】として完全再構築しました。

改訂情報
  • 初稿掲載時(2022年01月01日) : 66作品
  • 二稿掲載時(2022年01月02日) : 76作品
  • 三稿掲載時(2022年06月05日) : 88作品
  • 三稿掲載時(2023年04月28日):90作品
  • 四稿掲載時(2024年05月06日):105作品
  • 五稿掲載時(2024年12月29日):110作品
  • 六稿掲載時(2025年04月26日);120作品
タップできる目次

ポストメタルとは?

 ちなみにポストメタルというのが大まかにどういう音楽かは、以下の説明が一番しっくりきます。

スラッジ的スローな展開を基本としつつ、メロディやドラマ性を重視したインスト中心のメタル・ミュージック

BURRN!2009年6月号 特集コラム「ポスト・メタルへのいざない」、渡辺清之氏著より

 轟音系ポストロックのメタル版みたいなのがイメージとしては近いでしょうか今回の選出基準もなるべくここに沿っています。

 詳しくは2024年4月に再構築した↓をご覧ください。

選出基準と参考文献

 選出にあたって以下の制約を設けました。

ディスクガイド選出のあたっての制約
  • ポストブラックメタル/ブラックゲイズと呼ばれるバンドは含まない。
  • 1アーティストにつき、3作品までの選出とする(コラボ作は別カウント)。
  • Bandcampにてpost-metalタグをつけているのは選出対象とする。

 また、リストへの選出は下記の参考文献と著者の考えを基にしています。

参考文献

 記事内では優劣つけずにアルファベット順に並べています。最後のまとめにて、まず聴くべき5枚を挙げています。本文中は”である調・敬称略”で書いていることはご容赦ください。

ポストメタル・ディスクガイド1

Absent in Body / Plague God(2022)

 Neurosisのスコット・ケリー、Amenraのコリン、マチューの3名を中心とした新バンドの1stアルバム。本作には元Sepulturaのドラムであるイゴール・カヴァレラが全曲参加。

 それぞれの本隊のどす黒い部分だけを集積したかのような作風で、スラッジメタルやインダストリアル、トライバルの要素が強め。まるで光が差してこない闇の楽園を生み出している。

 最近のAmenraの流れを汲んだ#4「The Acres/The Ache」にはアンビエント~歌のパートも存在。やはり黒々しく、重々しい。地獄への片道切符だけを提供しているかのよう

 末筆ながら国内盤のライナーノーツを私が担当しています。

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➡ Absent in Bodyの作品紹介はこちら

Amena / Mass Ⅴ(2012)

 活動歴25年を超えるベルギーの重鎮による5thアルバム。本作からNeurosisのレーベルであるNeurotへ移籍。

 全4曲40分の重音の旅路は徹底して遅く暗鬱。ゆっくり奈落へと押し進む重いリズムと極端にヘヴィなリフの反復、情念たっぷりに叫ぶヴォーカルが、視界そのものを黒で塗りつぶす。

 さらには宗教音楽の要素やトライバルなリズム、繊細なポエトリーリーディングも交え、スケールは以前よりも巨大化。一筋の光すら差し込む余地のない闇による拘束が待ち構える。

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Amenra/ MASS Ⅵ(2017)

  6thアルバム。虚無感を煽るアルペジオから鉛のように重たいリフとリズムがのた打ち回り、ヴォーカリスト・Colinの悲痛すぎる叫びが重なる。

 そのAmenra苦痛三原則による方程式は守られているが、本作は静パートの存在感が大きくなっている。解放と祈祷を訴えるようなクリーン・ヴォーカルとギター。静と動の大きな落差からくるコントラストがこれまで以上に際立つ。

 Amenra史上最もドラマティックな楽曲「A Solitary Reign」収録。6作続いたMassシリーズは本作で締めくくり。

 メンバーそれぞれの人生に大きな影響を与えた苦痛や悲劇の上で書かれてきたMass、その痛みの積層こそがAmenraの大いなる歴史である。

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Amenra / De Doorn(2021)

 目下の最新作となる7作目。盟友であるOathbrekerからVo.Caro姐が久々にゲスト参加して生まれた傑作。特徴は明らかに余白と朗読が増えたこと。最低限に音を減らし、静かに語るパートがどの曲にも存在する。

 聴き手に対して己の内面を深く見つめ直すことを促すように。もちろん暗黒と重音を統率して「痛み」を限りなく表現する儀式は健在。

 本作は決して苦痛への招待状ではなく、暗闇の淵に引きずり込むようなものではなく、生命を尊み悼む音が押し寄せる。

 『De Doorn』はCVLT Nationが発表した”Top 10 POST METAL Albums Of 2021“の第1位を獲得。末筆ながら弊ブログの2021年ベストアルバム第1位でもある。

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➡ Amenraの作品紹介はこちら

AMOUTH / AWAKEN(2014)

 イタリア・アレッツォのポストメタル4人組の1stアルバム。聴いたらわかる通りにリスペクトISIS(the Band)な作品である。#2と#4がISIS「Hall Of The Dead」「Threshold of Transformation」を参照にして作られていると思う。

 しかし、このバンドを気に入ってしまうのはポストメタル好きの性。ポストメタルの様式に沿った轟音と叙情のハーモニーに、スラッジ・テイストの効いた重厚さと低音咆哮は、これでもかというぐらいにわかりやすい。

 そんな彼等は地道に活動を続けていたようで、なんと2020年には2ndアルバムを発表している。

➡ Amouthの作品紹介はこちら

The Angelic Process / Weighing Souls With Sand(2007)

 弊ブログのふたつのコラム【個人的ポストメタル探求】、【轟音巡礼 2021】においても本作を取り上げている。2007年に最大音量を目指す系音楽の頂点にして、究極の到達点に行ってしまっている貫禄。

 アメリカ・ジュージア州の夫婦デュオによる3rdアルバムは、例えるなら薬漬にしたJesuとNadjaとSUNN O)))の黒魔術による合成だ。

 憂鬱から生まれる絶望感をテーマに、過剰に負の怨念を吹き込んだ吹雪のようなノイズに唖然とする他ない。

 絶望はここにあるが、その先には美しさも存在する。しかし、バンドは既に活動を終了。夫であるK.Angylusの右腕が不自由になり、その後に死を遂げたからだ。

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➡ The Angelic Processの作品紹介はこちら

Asheraah / The Mountain(2013)

 東欧クロアチア・リエカを拠点に活動するポストメタル系インスト・バンドの1stフルアルバム。Facebookの影響を受けたものに、「Lvmen, ISIS, Neurosis, Red Sparowes, Amenra」という猛者たちの名前が並ぶ。

 Asheraahはその先人達の影響が色濃く反映されており、”ヴォーカルレスのISIS”ともいうべき轟音の波動が聴き手に押し寄せる。

 Oceanic期のISISに、Explosions In The Skyの叙情性やRed Sparowesっぽいしなやかさや浮遊感が加わったようで好感触。

 約10分近い楽曲を揃えた全6曲約57分収録。ちなみに今は活動していない。

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➡ Asheraahの作品紹介はこちら

À TERRE/ EMBRASSER LA NUIT(2025)

 フランスとスペイン・バスクの混成軍からなる5人組の1stアルバム。ポストメタルという大筋の方向性を持つバンドで近しいのはAmenraだが、もっとハードコア/スラッジ寄りのフィジカルが乗る。そして儀式的な雰囲気を持ちつつも、精神を供養するのとはまた違う感触がある。

 警告を促すようなシンセサイザーが入ってきたり、#4「Presque Morts」のようなアンビエント、#6「Tous Morts」のトラップやヒップホップ的な要素を取り入れることで肉体性をぼかす変質化が散見される。この実験的な試みが新鮮といえば新鮮。

 テンプレートにとどまらない姿勢や野心は作品に表れており、全7曲約34分と収録時間は短めながらも聴き応えは十分あり。

メインアーティスト:À Terre
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➡ À TERREの作品紹介はこちら

Battle of Mice / A Day of Nights(2006)

 ハードコア系女性シンガーであるJulie Christmas、元Neurosisで現A Storm of LightのJosh Grahamを擁した5人組の最初で最後のフルアルバム。

 黒い海を思わせるヘヴィなサウンドアプローチは、スラッジメタル人脈を介した必然さからくるものだが、やはりヴォーカルをJulie Christmasが務めていることで単色に収まっていない。

 彼女の語り、叫び、歌。典型的なハードコアやメタル・ヴォーカルにない不穏な美しさと痛みを置いていく。

 重い音楽ではあるが、同時に感情の音楽へと昇華しているのはJulie Christmasがいてこそ。なお彼女は、10年後にCult of Lunaとコラボレーション作品を発表することになる(後述)。

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Beneath a Steel Sky / Cleave(2025)

 ”レトロ・フューチャリスト・ノワール・ポストメタル”なる横文字攻撃を掲げるスコットランドの6人組。本作は1stフルアルバム。

 Explosions In The Sky系ポストロックの性質に重きを置きつつ、ポストメタルの重量感を丁寧にドッキングしているのが特徴。Rosettaに近いと感じるが、そこにRed Sparowesのメロウさを織り込み(曲名の長さも含めて)、場面によっては同郷の偉大な存在であるMogwaiも顔をのぞかせる。

 アーロン・ターナー寄りの唸り声やスラッジメタル由来の重低音は構成にもちろん組み込まれているが、それらを塩漬けにする美麗なセクションが機能。ねじふせるムーヴはほぼなく、詩的な態度で接してくるポストメタルとして浸れる良さがある。

メインアーティスト:Beneath a Steel Sky
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