2004年1月~2017年7月まで13年間、音楽サイトとして運用。4年ぶりに形を変え、2021年6月より再始動。

((((( 轟音巡礼 ))))) 2021

 とどろきわたる大きな音の意を持つ【轟音】という魔法の言葉。その言葉に関しては、人それぞれ感じ方も意味合いも違ってくると思います。わたし自身、国内外の様々なアーティストの音源やライヴで「轟音」と言われるものを体感しています。ライヴに関して言えば、MogwaiやMy Bloody Valentine、SUNN O)))、Boris、MONOなどなど。今もそれは継続中で、とてつもない衝撃から至福の心地良さまでいろんな形で魅了されています。轟音と情熱の狭間からは抜け出せそうにないまま、十数年を過ぎています。

 そんな体験を基にしてつくられたのが本コラム。轟音巡礼とは、正直に言えば適当に当てはめただけなんです(笑)。けれども、これ全部巡る(聴きまわる)と新たな境地に達しそうなので、おかしくはないのかなと。

 2014年に一度、掲載しました。その時はもっとポストロック寄りの作品を中心に44枚選出。今回の2021年versionでは、そういう形式よりも轟音と感じるものを主観と客観を交えて、21作品をチョイス。前回に入っていたのは半分もなく、同アーティストでも違う作品を選出したりしています。7年ぶりに改めて作り直すにはそれが良いと思いましたので。最終的には「時代だとか流行だとかよく解んねぇけど要は轟音でありゃそれでいいんじゃねぇの」って感じです。

 新しい発見が読者の方にあれば幸いです。それではいきましょう。

目次

Mogwai / My Father My King(2001)

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「静寂から轟音へ」というインスト・ポストロックのレシピを作り上げた人たちですが、その中で最強曲。20分を超える大曲であり、静と動の圧倒的なダイナミズムに飲み込まれます。特に10分辺りからリミッターを振り切って容赦なく音は積み重なる。その至福と昂揚感。後に紹介するSUNN O)))だったり、マイブラだったり、ライヴにおいて耳も体もヤバいことになるという音体験は、何度かあります。しかしながら、SUMMER SONIC 09 @ 大阪で体感した「My Father My King」は、私自身が体感したライヴの中で一番衝撃で、今でも忘れられないほどです。

Explosions In The Sky / The Earth Is Not A Cold Dead Place(2003)

アメリカ・オースティンのインストゥルメンタル4人組。静から動への王道パターンのインスト・ポストロックを精練し、世界を魅了し続けています。流麗なツインギターが呼応し、精微なるリズム隊と歩調を合わせて、巧みに編み上げる真摯な物語。わたしは2012年と2016年のフジロック、2017年来日公演、2019年のAfter Hoursと彼らのライヴをみています。それらライヴ全てでラストに演奏された収録曲#2「The Only Moment~」は、音を浴びることの幸福をいつだって教えてくれるのです。そして#5「Your Hand in Mine」がEITSの中で一番好きな曲ですね。聴いてて泣きそうになる。

SlipKnoT / IOWA(2001)

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いきなり違うジャンルに飛んだぞってなりますが、わたしが初めてちゃんと聴いた洋楽のアルバムです。やかましいし、激しい。とにかく怒っている。全てをぶち壊しにかかっている。本作を通して培われた騒がしい音楽への下地・耐性は原点でもあり、大事な通過点でもあります。悶絶ものの『スベテヲ破壊ス・・・』 の衝撃。当時・高校生だった自分に洋楽ってこんな凄いんだ!というのを植え付けられたものです。その後、スリップノットが凄すぎたという認識に変わるわけですが。「People = Shit」や「The Heretic Anthem」は本当によく聴いたものです。

Earth / Earth 2 (1993)

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1990年にディラン・カールソンを中心にシアトル近郊で結成されたバンドの1stフルアルバム。グランジの異形化か。オルタナティヴ・ロックの変異種か。そういった形容を無に還す、3曲73分ドローンの旅 with ディラン・カールソン。ほぼドラムレスで、ごく少数の展開と地続き/持続するギターの残響。ずっと鳴っている。終わりも始まりもない音だけが。思考も感情も必要ない。ひたすら音に身を任せるだけで良いのです。こんな音楽初めてというエポックメイキングな一作であり、ヘヴィ・ドローンという新たな流れを作った一作です。聴き終わったらこの青空と草原は嘘っぱちだという気分にさせられます。あのSUB POPからリリース。

SUNN O))) / Life Meral(2019)

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暗黒神が提唱する「Life Metal」という精神性と生き方。そうはいったところで、やはりSUNN O)))のドローンは鼓膜と身体に尋常ではないまでの圧をかけます。本作はスティーヴ・アルビニに録音による生々しい質感があり、女性ヴォーカルやチェロによるデリケートなタッチも追加。こうした音楽的探求した上で、轟くドローンに没入する。いつもの味の中で新しい調味料が効いています。4曲約70分という長い旅路の中では宗教的な祈りという面もあり。Life Metal症候群。

Boris / Boris at Last Feedbacker (2003)

世界的に活躍する日本の3人組のおそらく6枚目。5つのパート/トラック分けされたものの、トータルでいえば1曲44分の大曲。Borisでいえば初期の初期作である『Absolutego』や『Amplifier Worship』の方が本企画に合うと思います。ですが、Borisの旨味/醍醐味が凝縮されたのでこちらをチョイス。ドラマティックな展開を持ち、ノイズ~サイケデリック~ドローンといったものが交錯する。ブルース・ロックのような味わいもあれば、Boris印のノイズの轟きも当然あり。最終的にはHeavy Rocksに帰結し、物語は締めくくられます。

Nadja / Radiance Of Shadows(2007)

かつては1年でとんでもない量の作品を作り続けてきた、夫婦デュオの2007年発表作品。核爆弾の脅威についてをコンセプトに制作されています。凍てつく雪景色と溶ける前頭葉。猛吹雪の轟音ノイズ~エレクトロニクスが彼等の作品中で、最もヘヴィに響く全3曲79分の長編ドゥーム/ドローン叙情詩。他作では、My Bloody ValentineやSlayer等のカバー曲だけで構成されたアルバム『When I See The Sun Always Shines on TV』が入門編として入りやすいかもしれません。

Vampillia / Alchemic Heart (2011)

関西のブルータル・オーケストラが生み出した約25分ずつの2曲「Sea」「Land」を収録したアルバム。Pitchforkで8.0という高評価を獲得(本人でさえ謎だという)。”リスニングによって創造される美しい原風景が楽曲が終わるつれ破壊されていく”というコンセプトを基に、ピアノやストリングスの悲壮な雰囲気を生み、ギターノイズが闇に落としこむ。ゴッドおばさんことJarboe(ex-Swans)も参加し、厳かで神聖な世界観を造形。Kayo Dotの『Coyote』をより暗黒風ドローンに仕立てたかのようなサウンドスケープという印象もあります。

5ive / The Hemophiliac Dream (2002)

イギリスのアイドルグループとは全く関係ない、マサチューセッツのポストメタル/スラッジメタル・バンドの2曲入りEP。2曲収録で、2曲目はJames Plotkinによるリミックス。とにかく23分にも及ぶ1曲目がとにかく凄い。”モグワイ meets スラッジメタル”がもたらす大爆撃と大昇天。究極の恍惚感を目指す激重リフの応酬、歪み効かせすぎのファズ・ギター、サイケデリックな意匠、異世界と交信しているかのような電子音。全てが積み重なり、他の追随を許そうとしないレベルの音を轟かせる。未知のトリップ感をお求めのあなたはぜひ。

UFOmammut / Idolum (2008)

イタリアのドゥーム/サイケ・バンドの4作目。平衡感覚を破壊するほどの大音圧はSUNN O)))に接近する場面もあるし、激遅激重の悪夢にはElectric Wizard、理知的なポストメタルの意匠はISIS、宇宙系サイケ・トリップ感はHawkwindとあらゆる要素を凝縮して再構築。奈落と宇宙へのトリップを誘発するドープな音像を築き上げています。

Lento / Icon (2011)

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こちらもイタリア産の暗黒重音生成業者です。トリプルギターによる度を越えた驚異の音圧を武器に、上記のUfomammutと共に世界を震撼させている5人組。2ndアルバム『Icon』の破格の音圧とどす黒い世界観が強烈ですが、このライヴ盤はさらに凄い。奈落の底を見る激震の音楽と化してます。黒さと重さを突き詰めた薙ぎ倒す系リフにぶっ飛ばされ続ける。暗黒系ポストメタルのひとつの究極形をここに創り上げています。

UFOmammut + Lento / Supernaturals Record One (2007)

上記2組のイタリア産ヤバい奴らが重音協定を結んでしまったのがこちら。ドラゴンボールでいうと、カカロットとベジータの合体となるベジットのごとし。当然、最強になる組み合わせであり、必然の凶悪重音祭が繰り広げられるのです。

Omega Massif / Karpatia (2011)

ドイツのインストのスラッジメタル・バンド、Omega Massifの2作目。Lentoと比肩する超重量級インストを轟かせますが、全体通して抒情性のテコ入れがされています。ジャケットのように漆黒とまではいかない薄暗い感じは、本作を象徴していると思います。とはいえ、一旦スイッチが入ってからの轟音の威力/迫力はかなりのもの。あらゆるものを薙ぎ倒す重い快作。しかし、バンドは2014年に残念ながら解散しています。

Yellow Swans / Going Places (2009)

Pete Swanson在籍の轟音ノイズ・デュオのラスト・アルバム。「轟音ノイズ版Tim Hecker」などと評されておりましたが、内省的にも昇天を促すノイズが集合化し、荘厳に世界を包む。ノイズと共に送る「New Life」。

Ben Frost / A U R O R A(2014)

アイスランドを拠点に活動する電子音楽家の4thアルバム。根幹はエレクトロニクスを起点とした電子音楽であり、近年のインダストリアル~ドローン・ドゥームといった流れを持つ作風。鼓膜が擦れるようなノイズの応酬の裏側で、優美でエレガンスな一面がある。忘却の彼方へと押し流す轟音ノイズ流星群。自分は2014年10月の大阪公演(Vampillia共演)を観に行ってます。

ENDON / Through The Mirror (2017)

東京を拠点にして全世界に向けた活動を続ける5人組の2ndアルバム。1stアルバム『MAMA』よりもアグレッシヴだけど整理されている。ヴォーカルとギター、ドラムにノイズ・クリエイターが2名という編成。ブラックメタルとグラインド・コアの瞬発性/獰猛さに、縦横無尽にノイズが走り渡る。そして、ドスの利いたグロウルと耳を裂く金切り声が音像の上で暴れまくる。圧を感じるし、切り裂かれる感じもあります。異形のエクストリーム・ミュージックの完成。これぞ美意識と独自性の強みです。

Lightning Bolt / Earthly Delights (2009)

アメリカのプロヴィデンス出身のベース&ドラムのノイズハードコアデュオの5作目。これがまた2人編成だとは思えない、混沌爆音乱舞喧騒。Hellaばりの超絶ドラミング、歪みまくりのファズ/ギター代わりに美旋律を奏でたりもするベースが野蛮にぶつかり合う。無軌道な成り行きか、はたまた緻密な計算のうえか。豪快な爆音インストゥルメンタルが矢継ぎ早に襲い掛かってくる。2009年に名古屋クラブロックンロールで見たライヴでは、フロア中央に2人が陣取り、まわりをお客さんが取り囲む。その喧噪と盛り上がりはかなりのものでした。

Rorcal / Vilagvege (2013)

スイスのメタル・バンドの3作目。彼等も騒々しいという括りでの選出。ドゥームメタルを出自に、ブラックメタルやハードコアを混成させて飛躍を果たした作品で、絶え間ない殺戮の音にひれ伏します。速遅のコンビネーションを使い分けつつ、残虐な攻撃の手は全く緩めない。瀕死の状態でなんとか聴き通すか、この音にハイにさせられているか。次作の『Creon』ではギリシャ神話をモチーフにしたコンセプトアルバムを発表。自身の音楽をさらに拡張させています。

The Angelic Process / Weighing Souls With Sand(2007)

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ジョージア州アセンズの夫婦デュオによる3rdアルバム。吹雪のようなノイズと心地良い浮遊感が同居。まるでJesuとNadjaの邂逅の如きで、超重厚なスケールで相当なインパクトを誇ります。別のコラム・個人的ポストメタル探求でも挙げましたが、本作は轟音という言葉/表現に対してひとつの到達点を示していると思います。実際に発売から10数年経ち、評価がさらに高まっている気がしますし。

Vladislav Delay / Rakka (2020)

2020年リリース作品の中ではベスト3に入る1枚。聴いたことがある『Multila』ではデリケートなミニマル・アンビエントという印象ですが、あらぬ方向にスイッチが入ってしまったのがこちら。自身がツンドラで過ごす中で感じた「生存するか繁栄するための基本的な闘争、生物の生存のための戦い。その中に存在する、生々しい、未定義の、制御されていない、腐敗していないパワー」に触発された作品だといいます。#1「Rakka」#2「Raajat」の連撃でやられる鼓膜。乱暴なノイズとビートの連打に蹂躙され続けます。インダストリアル/テクノの尖鋭強化、そして自身の体験からきたであろう冷たく荒涼した世界の構築。2021年には続編となる『Rakka Ⅱ』を発表しています。

Mono / Beyond The Past (2021)

日本が世界に誇るインストゥルメンタル・バンド、MONO。結成20周年の締めくくりとなるフル・オーケストラとの共演となるロンドン公演を収録したもの。「Halcyon」の感動も「Ashes in the Snow」の凍てつく轟きもある中で、最後には世の中への怒りに満ちた「Com(?)」が全てを破壊するエネルギーで持っていく。集大成の一夜、現地で体感したかったものです。私自身、MONOのオーケストラ共演ライヴは、2009年12月の渋谷O-East、2012年フジロックと2度体験していますが、どちらも素晴らしく感動しています。この先、日本でこういったオーケストラと共演ライヴが行われたら嬉しい。

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