OVUM ‐‐Review‐‐

2006年に結成され、国内外で活躍する4人組インスト・バンド。これまでに2枚のフルアルバムを発表し、インストゥルメンタル・シーンに確かな功績を残している。

レビュー作品

> Nostalgia > ascention > microcosmos


 

nostalgia

Nostalgia(2016)

 2ndフルアルバム『ascension』より約2年4ヶ月ぶりとなる新音源は、全3曲入り約35分のEP。前作にて様式美轟音系インスト・ポストロックをやりきったと感じた模様で、バンドとして新しいカタチを模索したそうです。その後に行われた2014年の欧州ツアーでインスピレーションを得て、”Metal-Oriented Instrumental Rock.”というスタイルに開眼。本作につながっています。

  萌芽として前作の2曲目には、「Never Ending Rainbow」というマスロック調の新機軸がありました。しかしながら、海外ツアーで刺激を受け、急なるマッチョイズムによってここまでアグレッシヴな作風になるとは驚き。始まりとなったVirgin Babylon Recordsのコンピ提供曲「Hell Yeah」はまさに衝撃でした。本作においてもメタル色を帯びたギターリフ、ツインペダルを用いた鋭いリズムと変化は一聴瞭然。その鋼鉄武装は表題曲である#1「Nostalgia」で顕著でしょう。ライヴで既に2度体験(TJLA FEST2015Caspian来日公演)していますが、とりわけグルーヴの強靭さが以前とは桁違いです。

 楽曲の長さは3曲それぞれ11分、8分、15分とこれまで通りと言えますが、そのプログレッシヴ匠の展開の中では、新たに手にした暴力的なまでの攻撃性を随所に活かしつつ、じっくりと聴かせてくれています。決して攻撃一辺倒に陥らない各々の楽器の繊細な息遣い、バランス感覚は流石であるなと。もちろんOVUMの歴史の上で変化し、成り立った音楽であるから、持ち味の澄み切ったメロディが癒やしにもつながる。15分に及ぶ#3「Bleeding Grace」は、過去のスタイルと現在のスタイルがうまく融合した楽曲という印象を受けますね。

 インストゥルメンタル界隈に新風どころから嵐をもたらす作品として、重要な一枚じゃないかな。こんなのOVUMじゃないとかいう人は少なからずいると思いますが、そんな言葉すらねじ伏せる”強さ”をもったこの『Nostalgia』を僕は大歓迎したいです。

 


 

 

ascension

ascension(2013)

 2010年リリースの『joy to the world. ep』を挟み、フルアルバムとしては約5年半ぶりとなる2nd。ミックスはMERMORT sounds filmのHaruhisa Tanaka氏、マスタリングはKASHIWA Daisuke氏がそれぞれ担当しています。

 MONOに続く国産の轟音系インストゥメンタルの新鋭として頭角を現して早5年半。真摯なアプローチゆえの壮大でドラマティックなインストにさらに磨きをかけて、彼等は帰ってきました。オープニングを飾る14分近くにも及ぶ大曲#1「The Prayer Anthem」から、息を呑む劇的な展開と見事なアンサンブルが豊穣な音世界を打ち立てます。高らかに幕開けを告げる轟音ギターに昂揚し、何度も転調を挟みながらスケールを大きく広げていく。そして、刹那の静寂から天地を揺るがすほどの轟音へと切り替わってからのラスト2分は、アルバムタイトルである「ascention = 昇天」にふさわしい至福と恍惚の時間を約束してくれます。

 MogwaiやEITS、MONOの系譜にありつつ、繊細でノスタルジックな曲調が目立った前作からすると、一層引き締まった重厚なグルーヴやダイナミズムによって肉体性が増しています。それにマスロック~エモの要素が押し出されていることもポイントですね。初期のLITEを思わせる様な#2「Never Ending Rainbow」は小気味よいテンポでグイグイと引き込んでくれます。

 #3「defection」にしても#6「cause after effect」にしてもそうですが、情緒豊かな中に一捻りも二捻りも加えられたアイデアが冴えていて、決して一本調子に陥らないように練り上げられています。だからこそ、前述の#1や#4「Your Cruel Virginity」のような美しく激しく壮大な楽曲がさらに引き立つのでしょう。

 その中でもゆるやかな変動と共に明媚な風景を力強く奏でていく#7「Stella」から、聴く者全てに肯定の一歩を踏み出させる勇壮なラストトラック#8「Blessing」は、間違いなく本作のハイライト。ノスタルジックな旋律がもたらす安らぎ、そして至福の轟音を浴びる喜び。個恍惚の境地へと達する激動美麗のインストゥルメンタル。

 


 

microcosmos

microcosmos(2008)

   2007年5月に発売したEP「Under the Lost Sky」で注目を集めた日本のインストゥルメンタル・ロックバンドOvumの待望の1stフルアルバム。

 1stにして7曲60分に及ぶ大作(3曲が10分越え)。デビュー作にも関わらず初心者に対して全く優しくない、ポストロック好きが好みそうな作風。近い印象で言えばMONOになるけれど、動と静による対比のアプローチはやや抑え目で、流麗なアルペジオやクリアな音色を多用している印象。それ故にパンチ力ではやや欠けるかもしれないが、確実に感動へと導くストーリー展開は新人らしからぬもの。

 完璧主義ともいえる内容で全体的にやや冗長的に感じるところもあるが、全7曲に聴き手を揺さぶる真摯な物語が存在し、どの楽曲も惹きつける魅力を持っています。特に10分を越える#1、#4、#7はいずれもが心に焼きつくような鮮烈な感動が詰まった楽曲に仕上がっている。ツインギターは物悲しくも優しいドラマを描き、リズム隊が柔らかな質感を与えています。個人的に#7「Astral」はMONOを思わすぐらいの感動渦巻くストーリー展開で非常に心を打たれました。

 聴いた後には胸に強く込みあがってくるものがあり、この手の音楽を好む人に対してアピールするには十分なデビュー作。個人的には職人が様々な技巧を凝らして丹精に描いた明媚な風景画のように感じた作品でありました。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でGrumble Monsterをフォローしよう!

スポンサーリンク


▼ フォローする