忘却の彼方へと押し流す轟音ノイズ流星群 Ben Frost『AURORA』

 2009年に発表した『By The Throat』以来、実に5年ぶりとなる4thフルアルバム。Tim Hecker『Ravedeath 1972』『Virgins』、Swansの『The Seer』など10年代の傑作群に次々と参加し、さらには巨匠Brain Enoとのコラボレーションも実現。また日本のアーティストとも交流があり、関西のブルータル・オーケストラのVampilliaの1stアルバムのプロデュースを手がけています。

 忘却の彼方へと押し流す轟音ノイズ流星群。根幹はエレクトロニクスを起点とした電子音楽であり、近年のインダストリアル~ドローン・ドゥームといった流れを持つもの。それでも本作の衝撃度は他作品と比べても並外れています。

 これから始まる脅威を予感させる#1「Flex」、そして幻想的に揺らめきさえするシンセと無機質で重いビートが寄せては返し、気づけば凄まじいノイズの濁流に飲み込まれている#2「Noran」という冒頭2曲から、凶暴で破壊力のある作品であることを心身に叩き込みます。ゆえに現実は、危険な夢へとねじ曲がる。ちなみにWIREDのインタビューによると、ここまで凶暴な音になったのは「親のせい」だそうで。

 個人的には、近年のModern Love勢にリンクするかのような漆黒のミニマル、それにOneohtrix Point Neverの音響にも比肩する異型さがこの『A U R O R A』からは感じられますが、鼓膜が擦れるようなノイズの応酬の裏側で、優美でエレガンスな一面が顔を見せることもある。前述の#2がそうであるし、インダストリアル・ビートと多色の煌めきを放つシンセが旋回する異型のダンスミュージック#9「A Single Point Of Blinding Light」もそう。作品の大半は無機質で重々しい雰囲気に支配されるが、軽度に織り込まれている幽玄な美が神秘的なイメージを植え付けているように感じます。

 さらに本作では、ZSやGuradian Alienで活躍するGreg Fox(ex-Liturgy)、SwansのThor Harris、マルチ・ミュージシャンのShahzad Ismailyが、この緻密で暴力的なサウンド・デザインの形成に助力。息が詰まるほどの厚みのあるノイズ・シンフォニーを奏でる#4「Secant」、グラインドコアばりの猛烈なビートと吹雪のような電子音の化学反応が衝撃的な#5「Diphenyl Oxalate」、リード・トラックとして発表後に世界を震撼させた#6「Venter」など特に強烈です。氷のように研ぎ澄まされた音粒子の群れだけでなく、仰々しいパーカッションの反復が、余計に昂揚感を誘うのも反則。

 Andy Stottを彷彿とさせる漆黒の空間美に三半規管が歪む#10「Rare Decay」も見事。轟音ノイズが大胆にデザインを施す『A U R O R A』は、あまりにも眩く鮮烈です。

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