Destroyer –Review–

カナダの大所帯ロック・バンド、The New Pornographersの“乞食男爵”ことDan Bejarのソロ・プロジェクト。


Kaputt

Kaputt(2011)

   意外とリリースを重ねているらしく本作で9枚目とのこと。過去作は全て未聴であるが、これが実に心のツボを突いてくる作品で結構気に入った。AORに接近する風にそよぐような柔らかい歌声に、シンセ・ポップ~最近のチルウェイヴにも通ずるようなの心地よい解脱感、そしてジャズ/フュージョンのアダルトな雰囲気が溶け合い、耳馴染み良く親しみやすいサウンドを造形している。スティーリー・ダンやロキシー・ミュージック辺りが引き合いに出されているけど、それをよりモダンにして、渋い躍動感やふわっとした浮遊感をプラス。インディ・ロックという枠組みを越えた懐の深さを示しているのが印象的。組み立て・展開もとてもスムーズで、さらにアダルトチックなドラマ性や仄かなノスタルジーをきっちりと盛り込んでいるので涙腺がホッと緩む。そうした隅々まで神経の行き渡ったメロウな構築ぶりに耽溺していると、情熱的なサックスが火を吹き、ソウルフルな女性ヴォーカルがまた切ない哀愁を書き加えていくので、覚めるような感覚も持ち合わせている。とろけるような#1から始まって、本作を象徴するようなアダルトなムードと芳醇な音色が溶け合う#6、柔らかく壮大なエンディングを紡ぐ10分超の#9と佳曲が並ぶ。豊潤な音色による筆使い、温かみのある歌心、そして知的な構築力で、絶妙なポップさと懐かしさを持った音楽へと飛躍した本作。聴き手の胸を優しく打つ事は間違いない逸品だと思う。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でGrumble Monsterをフォローしよう!

スポンサーリンク


▼ フォローする