kamomekamome ‐‐Review‐‐

ヌンチャクの向達郎が中心となって結成されたプログレ・カオティック・ハードコアバンド。柏シティハードコア(KCHC)などとも呼ばれているスタイルを軸に、数多のファンの心を揺さぶっている。

レビュー作品

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BEDSIDE DONORS

BEDSIDE DONORS(2013)

 現代ハードコア・シーンの代表格、kamomekamomeの3年ぶりとなる4作目。結成から10年以上が過ぎ、そろそろ腰据えて落ち着いてくるかと思えば、とんでもない。前作から再び加入したベースの中瀬とのツイン・ヴォーカル体制を完全体に持っていき、捻りの効いた変則性を保ちながらも、ハードコアの直情的な表現と衝撃力が追及されている。

 殺傷性と叙情性の両刃使いによる複雑な構成がドラマ性を加速させる#1「ナイーブレターズ」に始まって、壮絶なハードコアを轟かせる#2「例え言葉は冷静に」、理性をぶっ飛ばす獰猛なリフとリズムの応酬#3「頭の中お大事に」と電光石火の如き序盤の速攻に早くもKO寸前。ズバッとコーナーに投げ込む剛速球、切れ味の鋭い変化球を巧みに投げ分けるのに加え、緩急と展開の妙は流石。それに聴き手を捩じ伏せる熱量と苛烈さは、過去最高レベルじゃないかな。魂のこもったエモーショナルな歌唱と共に表現される向達郎の詩世界も変わらずに独創性の塊。言葉のひとつひとつが刃のごとく突き刺さってくる。

 疾走感の中にナイーヴな情緒が乗せられる#4「劇団ノーサンキュー」、シンプルなタイトルの割にマスコアばりの構成で切れ味抜群の#5「氷」も鮮烈。やはり、高い演奏力に裏打ちされた楽器陣のアンサンブルは際立っているし、曲の密度は恐ろしいぐらいに濃い。その中で、#7「BEDSIDE MANNERS」や#9「瞬く街」といった曲ではしなやかなメロディが彩っており、ハードコアの突進性と上手く調和している。そして、ハイライトともいえるBRAHMANのTOSHI-LOW、SLANGのKO、元FC FIVEのTOMYがコーラスとして参加した#10「手を振る人」では、クライマックスにふさわしいテンションで突き進む。まさに嵐のような衝撃でこの界隈のファンにとっては堪らない締めくくりとなっている。

 通して聴くと、正直なところ2ndや3rdほどのインパクトは無いように個人的に感じてはいるが、クオリティは十分すぎるぐらいに高い。やはり現代のハードコア・バンドはこのバンドで決まりだろう。


Happy Rebirthday To You

Happy Rebirthday To You(2010)

   各地で絶賛された『ルガーシーガル』に続いての約2年半ぶりとなる3rdフルアルバム。これまでの2作品が趣は違えど、名作として名高い評価を獲得してきた彼等だが、今回はSWITCH STYLEのベース&絶叫コーラスの中瀬賢三を迎えて制作されている。そんな本作は、2ndアルバム『ルガーシーガル』の延長線上にあるものといって差し支えないだろう。

 1stで聴かせた百花繚乱のプログレの重々しい大海源をメシュガーの変拍子ポリリズムの炎が焦がすことで大胆にビルドアップを図った前作を踏まえ、本作ではさらなる切磋琢磨がラウドで情緒的に、また直情的な疾走感を伴うことで作品を上塗りしている。大地を力強く踏みしめながら全速力で走り、過剰なまでのドラマ性を伴って耳を劈く爆撃のようなサウンドは、局面を変幻自在に打開しながら大きな一撃としてぶちかまされる。瞬間瞬間に込められた徹底的にエモーショナルな音を放出しながら、多彩なフックを入れてアグレッシヴに展開していく。その1曲1曲の密度はあいかわらず恐ろしいぐらに濃い。

 しかしながら、轟音・叙情、変拍子・ポリリズム、そういったフレーズが浮かぶ卓越した演奏陣は非常にソリッドに収斂しており、精度も威力も熱量も増大してストレートな力感を打ち出すことに成功している。けたたましい咆哮から情緒的に歌いあげる部分まで、とかく感情を奮い立たせることに長けた向井氏のヴォーカルもまた、刺々しくもメロディアスだ。そこに中瀬の絶叫コーラスが壮絶に交わることでパンク的な熱が見事な形で反映されてもいる。荒涼とした世界に悲哀と虚無の雨を降らせながら核心を突くかのような日本語詩も、心の闇をあらぬ角度から抉り出していく。圧倒的にリアルで、圧倒的に美しい。これには日本語ロックの鏡とも評したいぐらいだ。美しく混沌とした感情の奔流に飲まれる涙のラスト#10「Happy Rebirthday To You」は、ハードコアの福音ですらある。

 苛烈だが、ただ過激なだけじゃない。豊かな情緒が本作には宿っている。人間の神経を直に刺激する多彩な感情表現、それゆえの巨大な衝撃が存在しているのだ。果て無き激情と混沌の渦へと放り投げるkamomekamome、彼等の創造と破壊がもたらした決死の10曲35分の本作は、ハードコアの新たな指標となりうる魂の傑作。完全に孤高の存在へ、これがkamomekamomeだ。


ルガーシーガル

ルガーシーガル(2007)

   約2年半ぶりとなる2ndアルバム。10曲で約67分とかなりプログレチッくな大作志向が出ていた前作からすると、今作は10曲約38分とスッキリとコンパクトな仕上がりとなっているのが特徴的だ。

 フックの効いたプログレッシヴなリフの波状攻撃に、歌謡フレーズと大地を震わす咆哮を巧みに使い分けるヴォーカル、重厚に揺れ動くリズムが渾然一体となって変幻自在に蠢くカオティックなウネリは聴く者の精神に鋭く切り込み、果てなき激情の渦に放り込む。圧倒的ブルータリティを背に猛進するハードコアというあくまでストレートな音象が表立っているのだが、キャッチーと取れるほど美しく色めきだつメロディラインが所々で顔を出し、複雑怪奇極まりない変拍子が裏で暗躍するというかなり濃厚なスパイスが効きまくっている。そんな様々な要素が交錯して描き出されたエモーショナルな螺旋に飲み込まれていく。3,4分前後の曲にこれだけ感情を凝縮しまくっているのも凄まじいものである。

 猛り狂う炎が豪快に燃え広がっていく#1、緩急を効かせたエモ・ロック#2、#10、独特の鋭さと勢いが特徴的な#3、#6辺りが非常にかっこよくて個人的に好み。このストイックな佇まいには脱帽だし、ジェットコースターにでも乗っているかのようなスリリングな展開は病み付きになる。本作はバンドの研ぎ澄まされた感性を見事に発揮した秀作だと思う。


kamomekamome

kamomekamome(2005)

   元ヌンチャクの向達郎が中心となって結成されたハードコアバンド、kamomekamomeの1stフルアルバム。先に2ndの方から聴いていて、かなりの衝撃を受けたけど、こちらも噂通りの凄さ。プログレッシヴな知性と緻密さを突き詰めたかの如し壮大かつ複雑なうねりをみせる曲ばかりが揃っている。ハードコアという範疇に留まらない衝撃の作品だ。

 確かにハードコア譲りの激情と破壊力が楽曲の根底を支配しているものの、ヘヴィなリフから滑らかなメロディまでを軽く操るギターに、うねりまくるベースと複雑精微なリズムをものともしないドラム、どこか病んだ詩が変幻自在の混沌世界を生み出している。静と動をくねくねと行き交う構成もさることながら、切なく心を伝うメロディ、激しく咽びかえるカオスを次々と胸へと突き刺す。もう既に貫禄は十分という完成度で、このバンドの凄さが如実に伺える内容だ。

 また、ストリングスで情感を出したり、アコギで穏やかで落ち着いた空気が流れたり、いきなり4つ打ちが飛び出したりと次々と変遷していくフックを効かせまくった展開には本当に舌を巻く。しかもそれはどこまでも広くて奥深い。本当に何が飛び出してくるかわからない、パンドラの箱のようだ。底知れぬ資質、卓越したテクニックが奇怪に歪んだ、それでいて音から豊かな風景を連想させてくれる。特にプログレシッヴな感性を光らせた中盤#4~#6辺りなんて、次々と情景を切り取って貼り付けていくもんだから、気付くと置いてきぼり。神経が擦り切れてしまいそうなほどの緊張感に包まれていて、荒々しく殺伐としたオーラが次第に高まっていく構成もお見事である。そんな本作は攻撃的な部分をしっかりと示しつつ、雑多な要素を巧く混在させ、破壊と美を見事に体現した作品といえるだろう。

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