Krallice ‐-Review-‐

クロム・テック、オースレルム・・・etcで活動したミック・バーとデイスリズミアで活躍するコリン・マーストンを中心としたブラック・メタル・プロジェクト。

レビュー作品

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Diotima
Diotima(2011)

   トレモロ・リフに己の生死をかけているアヴァンギャルド・ブラックメタル・プロジェクトによる3作目。これぞ偉大なるマンネリズムといいたくなるぐらい、本作もまるで揺らぐことなく従来のスタイルを堅持し、美麗轟音トレモロによる独創的アートが描かれている。3枚ともほぼ同じ事をやってるのだが、細かにアップデートして個性を強めているのが印象的だ。

 激流の如きトレモロが様々なものを巻きこみながら空間になだれ込み、時にメロウさを主張したがるベースがそれに加勢、さらにブラスト・ビートを猛烈に叩き込んで飛翔し続けていく。その彼等の音楽軸自体はやはり強烈であるが、本作では力強さと哀感をさらに増しており、今まで以上に緻密な構成を施すことでプログレッシヴに開けていく印象が強い。真骨頂の2本のトレモロによる絶望の色をした空への激走・飛翔というイメージはそのままだが、メロディックなギターフレーズが細やかに配されたり、ダウナーなパートに突入したりするなど、前2作品と比べても激しくスリリングな起伏に富んでいる。4曲で12分を越えるほど長尺曲が並ぶのだが(全7曲で約70分の大作)、手に汗握る展開の連続でグイグイと引っ張られていく可能性大。また、獰猛なグロウル~絶叫がこちらも歴代最高の存在感を示しているのも大きく、ブラックメタル方面の推進力を感じるのも楽曲におけるヴォーカルの影響が強くなったからだろう。故に激アグレシッヴかつメランコリックな音像に邪悪さがいい塩梅となって、彼等の個性/音楽は確実に強固になっている。特にタイトルトラック#4の泣きの前半から激しさを増してプログレッシヴな構成の中で駆けあがっていく様は痺れるし、扇情的なトレモロ・リフを中心に怒涛のドラマを奏で続けるラスト#7のインパクトも大きい。

 伝家の宝刀のトレモロを主体にしてることで受ける印象はこれまでと大きく変わらないにしても、細かなアレンジと展開を練る事で上級の興奮を必ず提供してくれる点は、大いに評価されて欲しい所。異形の禍々しさや芸術性を湛えながら、飛躍し続けるKralliceは本作でもその実力を大いに発揮したといえるだろう、本作もまた秀作である。


Dimensional Bleedthrough

Dimensional Bleedthrough(2009)

   なぜか、ミュージック・マガジンの輸入盤コーナーにも取り上げられてたUS産ポスト・ブラックメタルバンドの2作目。本作からベーシストが新たに参加しているそうだが、前作で見せた凄まじいトレモロの嵐と爆走ビートを主体とした異型のブラックメタルという点から大きな変化は無い。ヒステリックな感情を巻き上げながら昇華するトレモロによる幻想的な黒地獄は7曲約77分にも及ぶ。苛烈でありながらも、たおやかで美麗である独特の音像はもちろんのこと健在なのだが、本作ではブラックメタルっぽいパートが増えたり、グロウルを取り入れたり、薄闇に差す光沢あるメロディ、ポストロック寄りのディストーションギターが出てきたりとトレモロを少し減らして違うアイデアを違和感無く導入している。表面的には金太郎飴で曲調の幅は広がっていない印象も受けるが、奥行きは深くなっている印象。また静・動や緩急による展開の妙・ドラマティックな揺り動かしも巧みになっており、ブラックパートのエグイ切れ味を意識的に包むような儚さや悲愴感が独特の中毒性につなげている。煽情性の強いサウンドで身体の興奮は終始続くのだが、意識を奥の奥へ運んで行く深遠さも持ち合わせているそのスタイルはやはり魅力的。特に、19分にも及ぶラスト#7では鬼気迫るアグレッシヴな作風で荒涼とした風景を描きながらも、寂寥の色を帯びたメロディが紡ぎだされて不思議とドラマティックな美しさを浮かび上がらせる名曲。前作同様に期待通りの作品で、独創的個性をもってして本作でも我々を十分に魅了してくれる。


Krallice

Krallice(2008)

   アメリカから自給自足しながらブラックメタルを追及するWolves In The Throne Roomに続いてまた変なブラックメタルが登場、それがこのKrallice。2007年に結成されたばかりというが、ポストロック・シューゲイザーを意図的に取り込んだブラックメタルを志向している。というか邪悪さや狂気的な部分は薄めなので他とは一線を画している。その影響で一部ではアルセなんかと同様に”ポスト・ブラックメタル”と呼ばれて注目を集めているんだとか。

 確かに、シューゲイザー的な美麗さや幻想性をまとったトレモロ、ブラストビートを交えながらとかく走りまくるドラムが鬱々とした世界の支配者として君臨し、打って変わって狂気を剥き出しにする金切りスクリームが時折エモーショナルに残酷を彩るその音像は、確かに異型の産物といえるもの。基本的には長尺ミニマルな感じで、トレモロリフとリズムが多少の変化を伴いながら物語性を帯びて延々と流れて行く。絶叫が入るのはほんの一幕で、どの楽曲も9割近くはインスト、それもトレモロに焦点を当てて構成されているのが特徴。その極限までトレモロに命を懸けた姿勢には感服するほか無いが、それが胸を掻き毟るような激情と摩訶不思議な幻想性を生み、時には神秘のようなオーラすらも感じさせてくれる。そこに絡む寂寥感のあるメロディ、ヒステリックな感情の奔流もまた印象的。Wolves In The Throne Roomから禍々しさや残忍さを程よく抜いたら近いだろうか。とはいえ彼等以上にたおやかな響き、森の奥底から運んできたかのようなダークネスが音に染みついている。また、シューゲイザー譲りの重層的で厚みを持ったサウンドスケープは非常に前衛的であると同時に哲学的な重みも感じられて、荒々しい中にも理知的な面が備わっている。ちょっと類を見ない独特の黒さがある作品で、ブラックメタルの新境地を確実に開拓しているといえるだろう。

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