sgt. ‐‐Review‐‐

99年から活動を続ける実力派インストゥルメンタル4人組、sgt.。ヴァイオリンを加えた編成ながら獰猛なまでの烈しさと麗しき旋律が絡み合って生み出される、美しくもダイナミックなサウンドスケープが印象的なバンドである。2005年に初のミニアルバムとなる『perception of causality』をリリースして高評価を受ける。ところが2008年2月にギタリストが脱退してしまうという事態に。だが、それを乗り越えて2008年9月に初のフルアルバムとなる『Stylus Fantasticus』をリリースし、各方面から賛辞を浴びる。09年にはギターに新メンバーを迎え、ミニアルバム『Capital of gravity』を発表。2010年には初の海外ツアーも敢行し、さらなる成長を遂げた彼等は2011年8月に待望の2ndアルバム『Birthday』をリリースした。

レビュー作品

> Birthday > LIVE > Capital of gravity > Stylus Fantasticus


BIRTHDAY

Birthday(2011)

 10年に渡って蓄積した技術・経験という揺るぎない土台をベースに大輪の花を咲かせた傑作1st『Stylus Fantasticus』に続く3年ぶりとなる2ndアルバム。驚くほどの猛々しさや狂気の渦巻き、複雑な構成を基軸にしつつも時空を越えていく飛翔感や凛とした美しさが醸し出す幻想的な世界観・・・。sgt.たる根幹の音楽性はそのままに本作は“星の少女が旅をする物語”を多彩なアイデアとアンサンブルの元で投影していくコンセプト・アルバムに仕上がっている。

 言葉以上に雄弁かつリリカルで破壊的なインストゥルメンタルを奏で、涙腺を刺激する高い物語性を体現してきた彼等にとって、まさしく進化/深化を示した作品だ。メンバー自らの高い技術と構成/展開力を収斂し、されに中村圭作や大谷能生、uhnellysのkim他のゲスト・プレイヤーが招かれ、叙事的で刺激的な音磁場を見事に造形。ひとつひとつの楽曲はそのまま”星の少女の旅路”を表現し、それらが繋がって壮大でコンセプチュアルな物語を繊細かつ大胆に描ききっている。

 赤子の声が序章を飾る20秒強の#1「古ぼけた絵本」が始まりを告げ、自らの音楽をさらに精錬した#2「cosgoda」で加速して銀河を突き抜けていく。強靭でグルーヴィなリズムの上を美麗な鍵盤とヴァイオリンが響き、火花を散らすようなスリリングな展開を繰り広げる9分間にはグイグイ引き込まれ、美しい昂揚感に誘われる。続く#3「ライマンアルファの森」では一転してクラシカルな叙事性が色濃く表現されているが、終盤では独特のアンサンブルの上で優雅に舞うヴァイオリンの旋律に虜。情感豊かで映像性の高いサウンドは熟成を重ね、さらなる高みへと登っている。その中でフリーキーなサクスフォンが暴れ回り、プログレッシヴの展開力とジャズの生々しい緊張感とロック的ダイナミズムが交錯する#4「アラベスク」、Uhnellysのkimによる軽快なラップとうねるグルーヴィなリズム、情熱的なトランペットに艶やかなメロディが手を取り合う迫真の#7「Zweiter Weltkrieg」では新境地を開拓。実験性の強い#5~#6のインタールードといい、これまでと違った刺激で昂揚を湧きたてていく。ゲスト陣との調和も見事なもので、それが自身のアート感覚にも還元されていて世界観の深みにも繋がっている。一気にジャズ/クラシック的なフィーリングが増して荘厳で華やかな#8~#9の締めくくりもまた甘い陶酔と深い余韻を誘う。

 自らの想い描く”世界観”を突き詰め、言葉以上に雄弁で映像性の高い音色で綴られた楽曲の数々。それらが繋がって結実し、情感豊かに織り上げられたこの壮大な物語には、心の芯に響く感動がある。激しいダイナミズムと壮麗な音色が合致した傑作の1st「Stylus Fantasticus」を駆け抜け、様々なアイデアや構築に工夫を重ねながら新たな領域へと突入した本作もまた新鮮な驚きを与えてくれた。穏やかな安らぎから激しい戦慄までが巡り、地上より宇宙までのスケール感を演出する豊穣な音世界が秀逸だ。


LIVE

LIVE(2010)

 2009年11月25日の”Capital of gravity” TOUR FINAL ONEMAN SHOW @ 下北沢ERAの模様(ちなみに初のワンマン・ライヴ)を収めた2枚組ライヴアルバム。元々はototoyと一部店舗限定で昨年10月に販売されていたものだが、2ndアルバムの発売に伴って同時に全国流通する運びとなった。

 選曲は「銀河の車窓から」が入ってない事を除けばこの時点でベストといえるものだと思う。MCはカットされてるんだけど、全12曲で93分にも及ぶ白熱のパフォーマンスを封じ込めている。ゲストプレイヤーに中村圭作や大谷能生を迎えていて、完璧な布陣での白熱のアンサンブルが醍醐味だ。壮麗美と激昂が次々と訪れる。個人的にも公演は3度体験しているが、10年にも渡ってひたすら鍛錬し続けてきた彼等のライヴ力は半端のないものだ。まずあのリズム隊のしなやかで強靭なグルーヴに揺さぶられてしまう。初っ端の「囚人たちのジレンマゲーム」から抜群の安定感で突き進み、変拍子も交えたスリリングな展開を大木のように支えている。そして、ギターが折り重なり、核となるヴァイオリンの旋律を伴って壮大な空へと飛翔。鮮やかにsgt.の世界へと引き込んでいくのだ。ゲストのピアノやサックスも完璧に結晶化されていて、まるで隙がない。所々ではアドリヴも入ってるし、音源からの進化も感じ取れるはず。スリリングな展開で魅せまくる「Epsilon」や「Apollo Program」、代表曲「再生と密室」、圧倒的なアンサンブルと轟音が火を吹く「ムノユラギ」など聴き所多し。16分の完全版「銀河を壊して発電所を創れ」の昂揚感ときたらヤバい。ファンならずともチェックしてほしいライヴアルバムとなっている。


Capital of gravity

Capital of gravity(2009)

   新たに4人編成となったsgt.の6曲入り2ndミニアルバム。繊細さと攻撃性を同居させたギターに正確無比な鉄壁のリズム隊による太い磁場、この土台に凛々しいまでの麗しさを持つヴァイオリンが独特のスケール感と幻想性を加味し、sgt.という名の生命を宿す。その音楽性自体に大きな変化は見られないが、相変わらずその高品質の楽曲群には唸ってしまう。獰猛かつノイジーな荒々しさは前作ほどではないのだが、滑らかで流麗な曲調による色鮮やかさ、静謐な音の持つ力や深みがさらにアップしているように感じられる。

 ヴァイオリンの美麗な響きと肉感的なリズムが塗り重なっていく#2「Apollo Program」からして、彼等らしさを発揮。逼迫するような激しさと叙情的な色合いを巧みに配色し、明確な変化をつけることでの空間を鮮やかに装飾し、なおかつ息の詰まるような展開と緩急の妙技で一気に楽曲に引き込んでいく。突如としたリズムチェンジからのた打ち回るように崩壊へとベクトルが向く#3も実にコントラストと効いていて、揺らぎをもたらしている。その中で#4のように従来のバンドサウンドに加えてキーボードが戯れ、ラジカルな音響処理が絡む新境地を見せていて、陽性を帯びたメロディがとても印象的。徐々に爆発していくヴァイオリンの高らかな旋律が宇宙へと連れ去るかのようなカタルシスを味あわせてくれる10分越えの#5も特筆すべき出来で、クラシックな音風景ともポストロックの構成ともまた違う趣が随所に感じられるはず。また、楽曲の品質の高さに加えて、しっかりと眼の前に浮かび上がってくるかのような世界観の濃さもさすがである。小説との連携も取られた本作は、音だけでない表現もプラスしたかったということなのだろう。

 ちなみに彼等の中でも特に人気の高いラストの「銀河の車窓」は本作ではリミックスバージョンとして収録されているが、配信限定で再録バージョンが販売されている。こちらではエレガントな叙情と真っ白い幻想に彩られた珠玉の1曲に仕上がっているので、同様にチェックしておいたほうがいいだろう。フルアルバムから繋がる流れとしては至極順当に思えるが、彼等の実力が確かなことが如実に伺える作品である。その豊潤な音色には心の底から酔えます。


stylus Fantasticus

Stylus Fantasticus(2008)

   99年結成の3人組みインスト・ポストロックトリオによる全8曲入りの1stフルアルバム。今年2月にメンバーが脱退するというアクシデントを乗り越えて産み落とされた力作だ。

 天空を優雅に舞い踊る麗しきヴァイオリン、悠然とした大地を思わせるほどの力強さを持つリズム隊によって心に淡い残像を残していく壮麗なるスペクタクル・ドラマ。基本はヴァイオリン、ギター、ベース、ドラムを軸としたものなのだが、、ピアノやサックスなどの楽器による彩りとノイズを絡ませることで豪華絢爛にサウンドをドレスアップして三次元に広がる至上のサウンドスケープを生み出している。それは荘厳さと気品の高さ、整然とした佇まいを感じさせてくれると共に今まで見たこと無かったような未知のストーリーを描いている。理知的な静と動のコントロールによって、音粒子が創り上げる美しい幻想で彩られた世界と轟音が雲上を突き破るように炸裂する混沌とした世界が共存しているのだ。本作を聴けば既存のポストロック勢とはまた違うsgt.の力強さと美しさ、緊迫感に圧倒されるし、ROVOを思わせるようなカタルシスもまた醍醐味の一つだろう。細分化されたジャンルの垣根を越えて(本作においてもポストロックのみならず、ジャズやクラシック、ノイズ、エモなど)、独自の色彩に染め上げる創造性と技巧は特筆すべきものがある。

 全8曲、1曲ごとに流れ行く情景はこの上ない風情を感じさせ、心に蒼き火を灯してくれる。ピアノのエレガンスな響きと光に彩られた#1「すばらしき光」、華やいだメロディに温かみを覚える#4「声を出して考える方法」、サックスなども交えて優雅な一時を演出する#5「再生と密室」辺りは耳に鮮やかな残響を残すし、寂寞感を募らせる前半から9分を過ぎた辺りでヴァイオリンが感動的なドラマを創り上げていく16分超の#7「銀河を壊して発電所を創れ」には息を呑む。ロック的なダイナミズム、スリリングな展開力、凛々しき美しい魅力に満ち溢れた本作は鮮やかな世界へと人々を連れていく秀作だ。

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