俺たちのYOSHIKIさんが推薦してるんだぞ! 心から激奨してるんだぞ! という一冊。いや、これ読んでも心は温まらないでしょとツッコミたいのはさておき、氏の推薦を抜きにしても、”自分ってこのままで良いのだろうか?”と悩んでる方には、ぜひとも読んでいただきたい本です。
老若男女は問いません。誰しもが対峙している”生きる”に本当に向き合うための良書だからです。
わたし自身、「自分とは何か?ゲーム」に年中没頭し、結局はその永遠ループから抜け出せそうにありません。未来永劫、答えなんて出るもんじゃないんですけど、勝手に悩み、苦しんでる。どう生きていけば良いのか?はずっと手探りだし、今でも探しているような状況です。
人間、一番見たいものは自分であり、と同時に一番見たくないのが自分でもある。そんな都合の良い生き物です。本著に出てくる自分と向き合うための大切な問いかけのいくつかは、そこを突きます。
詳しくは下記の内容紹介に挙げますが、多くの人々が先送りにしてきたであろう問いに真剣に向き合う。自分を探している場合じゃねえと。とにかく思い描いたことの全てを行動と経験に落とし込んで、瞬間瞬間を大切に積み重ねていくことの重要さを謳います。
内容紹介
哲学書、自己啓発書。そういった言葉は当てはまりますが、副題にもある通りに自分と向き合うための本です。読みやすいのは対話形式形式を採っているからでしょうか。劇場の支配人が、人生に迷える人々と対話しながらストーリーは進みます。その悩みのひとつひとつは、誰しもが抱くものです。全5話にまとめており、以下が主だった内容となっています。
- 成功したい
- 自分を好きになれない
- やりたいことが見つからない
- 仕事がうまくいかない
- 人生をあきらめている
人から好かれたいし、良く見られたい。仕事で成功したい。大金持ちになりたい。誰もが羨む最高のパートナーを見つけたい。自由に生きたい。いろいろとあるでしょう。誰だってこういう願望を持たなかったことは無いはずです。それが人間の性だと思いますから。
社会という満員電車の中で身動きできぬまま、行く先の決まった停車駅に止まり続ける。進学、就職、結婚・・・etc。その生き方は、あなたが本当に下した結論であり、生き方なのですかと根本の問い。見栄、世間体、同調圧力。 周りが勝手に作られた虚像に縛られていませんか? 誰かがつくったレールの上ではないですか?
他人の尺度や物差しで生きようとしても満足感は決して得られません。何者かになろうとしなくていい。もっとわがままに自分を生きよと著者は伝えます。自分軸の必要性であり、徹底的な自分志向。人生はそれぐらい傲慢でも良いのかもしれません。だって、あなただけの物語なのですから。
ちなみにもっと個を掘り下げたい方には、平野啓一郎氏の『私とは何か』がオススメです。分人という考え方もそうですが、他者との関係性から見る個/自分というのを再認識させられます。
著者の苦しみの果てに生まれた
著者の紀里谷さんは言わずもがな、著名な映画監督・映像作家。そして、宇多田ヒカルさんの元夫としても知られています。誰もが羨む成功を手に入れた方と思いきや、決してそうではないようです。
2015年にハリウッドメジャーでの映画製作である『ラストナイツ』の公開。と同時に夢の達成。興行成績はまるで振るわなかったけど、自分のやることは全てやったという満足感はあった。それでも「これではない」という苦しみに苛まれ、「何者かにならなければいけない」という終わることのない強迫観念がずっとあったと言います。
それを解消すべく行動に移します。買い物へ行くのにも30分以上かかり、インターネットもかろうじて繋がるようなスピードしか出ない人里離れた土地で生活する。自分にとって大切なものと必要なものを見つめ直す。そして、先送りにしていた「自分と向き合う」という作業への没頭。生活当初は、それを経ることでさまざまな気づきがあったと言います。
紀里谷さんが自己と真摯にとことん向き合い続け、出してきた答えのひとつひとつ。4年半の歳月をかけて制作された書籍。それが本著なのです。だからこそ心の奥底に響くものがあります。本著の終盤には、以下のように記述されています。
成功者でさえ、同じ人間。その苦しみやプレッシャーの重さは、桁違いだとは思いますが、悩む内容ってのは一般人とあまり変わらない。
大切にしたい言葉
決して、すべての悩み・問いに対しての “答えは書かれていません”。あとがきにもありますが、それは読者自身が考え、もがき、経験してこそたどり着けるようなところだと思います。地平線(おそらく自分なりの答えであり、自由だと思います)を追いかけて生きていく。そんな永遠の課題と向き合って人生は進んでいくのだから。
「自分自身を徹底的に見つめ直すこと」 本著を読むことでそのきっかけは必然的に作られるはずです。最後にもう一つ印象的な言葉を紹介して、終わりたいと思います。