Agalloch ‐‐Review‐‐

アメリカ・オレゴン州を拠点に活動する自然崇拝ダーク・メランコリック・メタルバンド。フォークとブラックメタルの邂逅というUlverの感性を持った、またポスト・ブラックメタルとも親和するバンドとして、世界中にその存在を拡大している。現在までに5枚のアルバムをリリース、2010年に最新作『Marrow of Spirit』を発表した。

レビュー作品

> The Serpent & The Sphere >Marrow of the Spirit


THE SERPENT & THE SPHERE (ザ・サーペント&ザ・スフィア)

The Serpent & The Sphere(2014)

 キャリア約20年にして、意外にも初の国内盤リリースともなった通算5枚目となるフルアルバム。プロデュースにはビリー・アンダーソンを迎え、国内盤はお馴染みのDaymare Recordingsから発売されている。

  前作『Marrow Of The Spirit』のレビューを記述した時は、”カスカディアン・ブラックメタル”なんて言葉は一部の呼称でしか無かったと思うが、それからWolves In The Throne Roomがさらなる躍進を果たした事を中心にして一気に広まった感がある。当然、20年戦士であるAgallochはそのジャンルにおいて先駆者的立ち位置にあるわけだが、自然崇拝を背景にしたメロウなブラックメタルは、これまでと同じく別天地へと誘う。冒頭を飾る10分超の#1「Birth and Death of the Pillars of Creation」からして彼等らしい曲であり、暗鬱なドゥームの底から悲哀のメロディが零れおち、幽玄かつ壮大な世界が構築されていく。ブラックメタル流儀の小汚いヴォイスやトレモロは、当然に混合されているが、退廃的でありつつも情緒的でドラマティックな作風に昇華して行ける辺りはさすがである。

  アコースティックなインスト3曲(#2、#4、#8)では優美な流れを生み出し、完全にあらゆるポスト系の流れを汲んだ12分超えのインスト#8 「Plateau of the Ages」にも挑戦。憐憫、哀切といった言葉が浮かぶほどにそのサウンドは暗く悲しい側面を持っているが、雄大で美しい自然を想起させる力も併せ持つ。ブラック出身であることを思い出させる哀愁と粗暴の#3「The Astral Dialogue」も周到に用意しつつ、芸術性の高さ、雄弁なストーリーを作品を通して表現しきることに成功。アトモスフェリック~ポストブラック系統のサウンドとして、高い次元に君臨していることを軽々と証明してくれている。


Marrow of the Spirit

Marrow of the Spirit(2010)

 USオレゴン州の自然崇拝フォーク・ダーク・メタルバンド、Agalloch(アガロク)の4年ぶりとなる4枚目(過去作は未聴)。冷雪降り積もる闇夜の森の深奥で大覚醒した初期Ulver”、本作を聴いているとまさに表現が浮かんでくる。トラッド/フォークとブラックメタルの邂逅を果たした彼等の音楽は、雄大なる大自然を闇のヴェールで包み込んでいくような不思議さがあるし、悲哀と絶望を背負いながら掻き鳴らされるメロディに胸の奥がヒリヒリと痛む。枠に収まりきらない超大なスケール感とアート感覚を持つ作品である。

 寂寥感のこもった切ないアルペジオや温かなアコギの調べ、ゆったりとしたリズムによる叙情的なパートは柔らかく穏やかな表情を見せる一方で、邪悪なヴォーカルに冷徹なトレモロ、炸裂するブラストビートが精神崩壊の因子を振りまいていく。どちらのパートもあくまで音楽要素の一部として捉えらていて、サウンドの緩急・美醜に細心の注意を払いながら、コンセプトに挙げる母なる自然へと調和を示しつつ、超大なるスケールの物語を奏でている。壮絶なコントラストの果てに拡がる絶望感は半端ない。それでいて耽美性にも意識が向いていて精巧な美しさも共存しているのが本作の凄いところ。

 ダークな叙事性とノルウェイジャン・ブラックメタルの狂気を併せ持ち、プログレのような複雑な展開の中でドラマティックに物語を描く巧さは底知れず。場面場面での聴かせ方に捻りが効いているし、またバンド・サウンドのみならずピアノやストリングスにサンプリングでの効果的な演出の挟み方も巧い。というわけで、初期のUlverとはリンクする部分が多い。闇も光も吸い込んでしまうような世界観といい、作品に通底している悲哀といい、人間の核心にも自然への核心にも迫る音楽を彼等は制作しているようにも思えてしまう。ほぼ10分を越える楽曲ばかりだが、緊迫した空気感と深遠な表現力が発揮された全6曲65分、聴けば聴くほど深みに圧倒されていく。傑作。

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