私的名盤80選

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私的名盤②

Bring Me The Horizon / That’s The Spirit (2015)

 かつてデスコア・バンドだった英国ロックバンドの5thアルバム。夢見るデスコアじゃいられないということで、前作辺りから顕著に変化してきたが、それが本作で大輪の花を咲かせる。

 獰猛な肉食獣を思わせる激しさをほぼ封印し、歌とメロディに焦点を当ててのメインストリーム展開。代表曲となる#3「Throne」や#9「Drone」を収録し、世界中の人々を巻き込んだ。

 例え変化をしようと納得させるだけの曲/作品が残せれば済むと、勇敢な改革が行われたこのドラマティックなアルバムは教えてくれる。

オススメ曲:#9「Drone」

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cali≠gari / 15 (2021)

 1993年に結成された異形のヴィジュアル系バンドの3年ぶりとなる15thフルアルバム。活動休止からの復活以降では『12』を凌いで最高傑作だと感じる内容。

 アダルト・ヴィジュアル系(略してAV)というには、あまりにエネルギッシュで快速のドライヴ感があり、後半の楽曲では哀愁よろしくがブーストしていくのもらしい。

 熟練と変化の両軸が基本にあるからこそ成せた作品であり、キャッチーなのに凝っているこのバランス感覚。#1「ひとつのメルヘン」や#3「嗚呼劇的」、#7「ニンフォマニアック」など佳曲が揃い、入門盤としてもオススメ。

オススメ曲:#3「嗚呼劇的」

アーティスト:cali≠gari
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Caspian / Tertia (2009)

 アメリカ・マサチューセッツ州のインスト・バンドの2ndアルバム。先人のメソッドによる轟音ポストロック様式を軸にして、儚げな叙情を湛えたメロディ、嘆き叫ぶかのように爆発する轟音を大胆かつ緻密に行き交う展開で引きつける。

 美しさと激しさを兼備したツインギターは迫力を増し、剛・柔の表情がさらに豊かになったベースライン、パワフルな躍動感が強まったドラミングと相まって強烈な磁場を築く。

 オリジナル・アルバムの中でも最高傑作に挙げられることもある作品で、ポストロック界を代表する名曲として君臨する#10「Sycamore」収録。

オススメ曲:#3「Ghosts of the Garden City」

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Children of Bodom / Are You Dead Yet ? (2005)

 フィンランドのメロディック・デスメタルの雄、5thアルバム。前作『Hate Crew Deathroll』を最高傑作にする人は多いし、実際にそれほど評価は高い。

 でも、わたしはこれを一番聴いているし、本アルバム発売時の来日ツアーに参加している点が推す理由である。キーボードの音色が抑えめになり、メタルコア~ヘヴィネスに寄ったつくり。そこが賛否両論だが、わたしは好きだ。

 稲妻のような衝撃が走る表題曲#2「Are You Dead Yet?」、ライヴに欠かせぬ#5「In Your Face」など収録。アレキシ・ライホは亡くなってしまったが、2005年、2009年と彼の雄姿を見られて良かった。

オススメ曲:#2「Are You Dead Yet?」

COALTAR OF THE DEEPERS / THE BREASTROKE (1998)

 今や作曲家としての仕事の方が多いだろうNARASAKI氏を中心とする日本のロックバンド。本作は1991~1998年までに発表した楽曲の中から選りすぐった13曲を収録したベストアルバム。

 メタル・シューゲイザーを筆頭に、ハードコア、オルタナ、テクノ、アンビエント、インダストリアルなど多種の要素を調理して構築。破壊力満点の轟音を操りながらも、琴線を擽るポップネスがとても刺激。

 本作を初めて聴いたのは再発された2008年。発売当時の1998年にこれを聴いていたら、聴く音楽が変わっていたのかなと思う。

オススメ曲:#12「Cell」

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Converge / Axe to Fall (2009)

 ボストン出身のハードコア界の重鎮の7thアルバム。バンドと紐づけされる名作『Jane Doe』よりもわたしは本作推し。世界陸上100m決勝の真のテーマソングこと#1「Dark Horse」をド頭に猛烈なスピードで感性を焼き払う曲が並ぶ。

 Cave Inのメンバーが参加する#4「Effigy」、NeurosisのSteve Von Tillが参加した#12「Cruel Bloom」もあり。まさに混沌を知る教典。ストイックに突き詰めたハードコアの真髄を激しく美しく表現している。

オススメ曲:#1「Dark Horse」

Corrupted / Garten Der Unbewusstheit(2011)

 大阪のドゥーム/スラッジ・バンドの5作目。全3曲約63分収録の大作で、タイトルはドイツ語で日本語訳は”無意識の庭園”。

 地獄の使者のような重轟音とたおやかな美しさを湛えた本作は、過去に比べると少しだけ明るいエッジと音に身を委ねられる感覚を有します。

 初期からサウンドを変化させてきているが、Corruptedの音楽は変わらずに聴き手の人生に深く影響を及ぼすもの。取りつくろった表現はない。簡単に答えをくれない。極地をいく表現はここに研ぎ澄まされている。

オススメ曲:#3「Gekkou no Daichi」

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Creature Creature / Death Is A Flower(2017)

 MORRIE御大率いるロックバンドの4thフルアルバムにして最終作。さながらヘヴィロックとプログレッシヴと演劇をかき混ぜた暗黒耐久戦。地獄を覗きに行く音楽であり、肉体的な狂いも魂の浄化もここにはある。

 しなやかな動きや迫力を増した舞台演劇が繰り広げられれば、メタリックなサウンドで猛然と畳みかけ、古来のV系イズムが流麗に引き立ち、予測不能な展開が過剰なスリルをもたらす。

 その上でこれまでと比べて上品な大らかさがあり、存在感を増したクリーントーンとファルセットが深い美しさを添える。Creature Creatureの到達点。

オススメ曲:#2「エデンまで」

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Cross My Heart / Temporary Contemporary (2000)

 アメリカ・ボルティモアの叙情派エモ・バンド。1997年から2001年までと短い活動期間で残した唯一のフルアルバム。1st EPを踏まえて洗練された内容で、大人びた叙情性を帯びた曲が続く。

 クリーントーンを主体に彩られる淡く切ないサウンド、繊細な歌心を持ったRyan Shelkettのヴォーカル。バンドを支える屋台骨は変わりはないが、ゆったりとしたテンポの中で綴られる哀愁のメロディは、さらに磨きがかかる。

 これぞ熟成のスロウ・エモ。個人的な葛藤と物悲しいドラマ性を湛えており、繊細かつ深みのある感情表現に心が締め付けられる。

オススメ曲:#1「The Great Depression」

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Cult of Luna / The Long Road North(2022)

 スウェーデンのポストメタル大御所による2022年発表の8thアルバムは、全9曲約69分といつも通りの重厚長大な旅路。20年以上のキャリアに基づいたヘヴィネスとダイナミズムはいつも通りに聴き手を制圧。

 自身が持つ最大限の強みと伝統を誇示しつつ、ゲスト奏者との接続によって全く異なるテクスチャーもその世界に内包。決して驕ることなく、CoL音楽の求道は続く。だからこそ現在のポストメタルは、彼等と共にあり続けている。

 本作でハイライトとなる#8「Blood Upon Stone」は、わたしの中では2010年代以降のCoL最強曲。

オススメ曲:#8「Blood Upon Stone」

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